無償貸与と、2024年に変わった法律のこと
切り替えを検討するとき、最初に確認すべきなのが現在の契約に設備の貸与が含まれているかです。
ここを見落とすと、切り替え時に予想外の請求を受けることがあります。
「給湯器が無料」の正体
プロパンガスの契約時に、給湯器やコンロを無償で設置してもらえることがあります。これを無償貸与と呼びます。
ただし、実際に無料なわけではありません。設備の費用は毎月のガス料金に上乗せされて回収されています。支払っている総額は同じで、名目が「設備費」ではなく「ガス代」になっているだけです。
無償貸与には契約期間が設定されます。給湯器で10年、ガス配管で15年が一般的です。給湯器は寿命と契約期間が近いため、ガス機器の中でも最も多く無償貸与に使われています。
「無償配管」という呼び方もあります
同じ仕組みを、業界では無償配管や貸付配管とも呼びます。 2025年12月の最高裁判決の補足意見に、この商慣行の定義がそのまま書かれているので写します。
無償配管の商慣行とは、戸建て住宅の建築の際、建設業者等が、提携しているLPガス販売事業者に当該住宅の消費設備に係る配管(以下「屋内配管」という。)の工事を無償で行わせ、当該LPガス販売事業者は、当該住宅の購入者等(以下「家主」という。)とLPガスの供給契約を締結する際に、屋内配管の設置費用を一括して請求せず、当該家主が所定の期間内に当該供給契約を解約するなどの場合に、当該設置費用の精算を求めるというものである。
何が問題とされてきたかも、同じ補足意見に書かれています。
家主が短期間で解約しようとすると高額な設置費用を一挙に支払うことを余儀なくされるため、LPガス販売事業者を選択する自由を阻害するおそれがある
つまり「解約しにくくなること」そのものが問題だとされてきました。 この条項が最高裁でどう判断されたかはプロパンガスをやめたら設備費を請求されたに書いています。
期間内に解約するとどうなるか
契約期間の途中で他社に切り替えると、次のような請求が発生することがあります。
| 請求されうるもの | 内容 |
|---|---|
| 設備の残債 | 未回収分の設備費用 |
| 撤去費用 | 貸与されていた機器を外す費用 |
| 解約手数料 | 契約書に定めがある場合 |
| 未払い料金 | 精算分 |
金額は契約内容によって変わります。切り替えを決める前に、現在の契約書を確認してください。
2024年に法律が変わりました
ここは正確に書きます。変わった部分と、変わっていない部分があります。
2024年4月2日、液化石油ガス法の施行規則が改正されました。改正の柱は3つです。
| 改正の柱 | 内容 | 施行日 | 適用範囲 |
|---|---|---|---|
| 過大な営業行為の制限 | 正常な商慣習を超えた利益供与の禁止、切替えを制限するような条件付き契約の禁止 | 2024年7月2日 | 新旧契約とも |
| 三部料金制の徹底 | 基本料金・従量料金・設備料金の分離、ガスと無関係な設備費(エアコン、Wi-Fi等)の計上禁止 | 2025年4月2日 | 新規契約のみ(既存は早期移行の努力義務) |
| 情報提供の強化 | 入居希望者への料金の事前提示、要請時の情報提供義務 | 2024年7月2日 | 新旧契約とも |
出典:LPガスの商慣行是正に向けた制度改正について(北海道)
誤解されやすい点
「2024年7月以降は違約金が発生しない」と書いているサイトを見かけますが、公的資料にそこまでの記載は確認できません。
規制されたのは「切替えを制限するような条件付き契約を新たに結ぶこと」です。すでに結ばれている契約の残債や撤去費が自動的に消えるとは、公的資料には書かれていません。
また、設備費用を分離して表示する「三部料金制」は2025年4月2日施行で、新規契約のみが対象です。既存契約については早期移行の努力義務にとどまります。
つまり、古い契約を持っている人ほど注意が必要です。楽観的な情報を鵜呑みにせず、自分の契約書を確認してください。
その後、最高裁の判断が出ました(2026年10月追記)
2025年(令和7年)12月23日、最高裁判所が、10年以内に解約したら設備費を払えという条項を「全部無効」と判断しました。消費者契約法9条1号によるものです。
ただしどんな契約でも無効になるわけではありません。判決の補足意見は、設備費を基本料金・従量料金と分けて請求している場合(三部料金制)は射程が当然には及ばないと書いています。
判決文を読んで整理したものをプロパンガスをやめたら設備費を請求された。最高裁は「全部無効」と判断しましたに書きました。
切り替えた後の値上げ
もう1つ、契約前には見えにくい問題があります。
プロパンガスは自由価格なので、契約後に値上げすることが法的に禁止されているわけではありません。切り替え時は安い単価を提示し、その後じわじわ値上げして元の水準に戻す、という例が実際にあります。
対策は1つです。単価をいつまで保証するのかを、書面で確認すること。 口頭の「しばらくは大丈夫です」には効力がありません。
訪問営業には特に注意
「今より安くなります」という訪問営業で、内容を確認しないまま契約し、後から違約金や設備費が判明するケースが報告されています。
その場で判断せず、契約書を持ち帰って読む。これだけで大半のトラブルは防げます。
困ったときの相談先
契約内容に疑問がある、不当な請求を受けたという場合は、次の窓口があります。
- 消費者ホットライン 188(局番なし)— 最寄りの消費生活センターにつながります
- 資源エネルギー庁 燃料流通政策室 — 制度の所管官庁
この記事は公開されている資料をもとに整理したものであり、法的な助言ではありません。個別の契約についての判断は、契約書と上記の窓口でご確認ください。
確認すべきは3点
切り替えの手順そのものは簡単ですが、事前に次の3つだけは押さえてください。
- 設備の無償貸与があるか、あるなら契約期間はいつまでか
- 解約時に請求されるものは何か
- 新しい会社の単価は、いつまで保証されるか
すべて書面で確認できれば、大きな失敗は避けられます。